第51回関西俳句大会

日時:平成28年5月28日

於:大阪・淀屋橋朝日生命ホール

【朝日新聞社賞・関西俳句大会賞】
抱き取りし子になまはげの藁匂ふ 大阪府 小畑晴子

【関西俳句大会賞】

龍天に登り赤子に蹴る力 滋賀県 前田攝子
灯台に入り遠足が螺旋なす 三重県 小林青波
うかうかと生きて木の実に打たれけり 大阪府 中野のはら
神楽笛神代の闇を引き寄せて 京都府 平万紀子
手毬つく今もどこかで神隠し 岐阜県 七種萩子
秋深む一つの事が終るたび 石川県 中川計介

茨木和生特選
熊撃ちの話正座で聞く子かな 花木研二
海鼠海女潮の温さを嘆きをり 西尾敬一
星殖ゆる名残の空となりにけり 渡辺政子

鈴木しげを特選
かたくりの花の話に加はりぬ 足立歩久
年木積む大和に旧き薬町 渡辺政子
餅搗くや一番臼は神のもの 馬場節子

岡田日郎特選
真青なる大海原や探梅行 竹森静雄
村ひとつ跨ぎて淡し冬の虹 服部登紀子
山神に御酒を供へて猟了ふる 木下敦子

大峯あきら特選
どくだみの花明りして夜もにほふ 藤村澄子
龍天に登り赤子に蹴る力 前田攝子
秋深む一つの事が終るたび 中川計介

古賀雪江特選

対岸に自転車の待つ初渡し 下村裕子
神楽笛神代の闇を引き寄せて 平万紀子
被爆楠大き緑陰つくりをり 竹内宏行

後藤立夫特選
糶市の合羽に跳ねる寒の水 藤本則
里神楽指の先まで鬼となり 縣恒則
藁匂ひ来てなまはげの入り来る 小畑晴子

辻田克巳特選

遠足の塒騒ぎの集合地 中村未有
永き日の紐育より小言かな 乃美隆子
春の日の目視のできるほど淡し 西本真里

鷹羽狩行特選

山動きゐるかに蛍乱舞せり 茨木ミキ子
やはり人住んでゐるらし注連飾 長安悦子
神楽笛神代の闇を引き寄せて 平万紀子

棚山波朗特選

うかうかと生きて木の実に打たれけり 中野のはら
白足袋の位置を定めて弓を引く 深水香津子
寒禽に懐深き大樹かな 常澤俶子

有馬朗人特選
抱き取りし子になまはげの藁匂ふ 小畑晴子
代代の根来の椀の小豆粥 髙橋翠
巣箱掛く木に囲まるる野外弥撒 小畑晴子

山崎ひさを特選
頼り来し夫の手を引く春野かな 中家桂子
勾玉の形にも似てひよんの笛 木下敦子
鏡冴ゆいつより父に似てきたる しのぶ日月

小河洋二特選
抱き取りし子になまはげの藁匂ふ 小畑晴子
雪吊に疲れの見ゆる日差かな 山田綾子
ひよんの笛吹きをり仲間外れの子 西村博子

三村純也特選
三寒のブーツ四温のハイヒール 西村千鶴子
糶台を網ごと逃げし祭蛸 竹中秀子

塩川雄三特選
先づ正す遺影の傾ぎ盆用意 高野卓也
眼も耳もまだまだ達者薬喰 井村隆信
猫の恋からも見習ふことのあり 小林壽雄

大石悦子特選
大縄跳波が来る来る来る跳べず 池田緑人
うかうかと生きて木の実に打たれけり 中野のはら
春浅き女性車両に老夫婦 山本勝江

森田純一郎特選
眠れずに機窓に白夜眺めをり 髙杉光昭
綿虫や独り旅なる我に付き 秦野淑恵
風花の何にも触れず消えにけり 古川和子

山尾玉藻特選
地の枯葉枝の枯葉に飛びつけり 日比野勇
手毬つく今もどこかで神隠し 七種萩子
病む鶴の上をまはりて鶴帰る 浅井陽子

柏原眠雨特選

み仏を膳の横切る大根焚 田村祐巳子
灯台に入り遠足が螺旋なす 小林青波
畳屋が踏んで収まる畳替 広岡育子

鈴木節子特選

軍鶏の眼の鋼光りや涅槃西風 加藤いろは
白杖の触れゆく草の茂りかな 斎藤詳次
墨痕に息づかひあり冬ぬくし 森川翠

西村和子特選

手毬つく今もどこかで神隠し 七種萩子
膝つきて可愛いい鷽と替へにけり 池田和子
挫けてはならぬ白足袋穿きにけり 西村博子

徳田千鶴子特選
殉教の島藷を干し網を干す 小林千草
龍天に登り赤子に蹴る力 前田攝子
軍毛布夫のよすがのひとつきり 花岡鈴子

岩城久治特選
草虱つけてあんたら何してたん 池田緑人
雪だるま作る子にわいわいと雪 中村未有
布団干す人の丸顔見えてゐし 福本須代子

朝妻力特選
浮寝鳥影と睦みて漂へり 金子つとむ
臘梅や出仕の巫女の薄化粧 井上千恵子
撮り鉄に道を問はるる六日かな 中川晴美

津川絵理子特選
浅春や水際を行く探鳥会 野口憲子
春隣靴の悦ぶ方へ行く 密門令子
山眠る弔辞に俘虜の日々のこと 山内利男

山本洋子特選
秋深む一つの事が終るたび 中川計介
立山のよく見ゆる日や鍬始 小林れい子
縁側に広げし玩具小鳥来る 安保美恵子

大橋晄特選
樏を戸口に並べ無人駅 中村優江
初蝶のもつれて翅のふれ合はず 宮本啓子
校舎いま老人ホーム雛飾る 山上和秀

田島和生特選

爼板に筒切りの鯉山桜 浅井陽子
升さんのバットとボール春隣 岡本幸治
伎芸天わが著ぶくれを見そなはす 村田幸子

金久美智子特選
花芒湖一片の雲置かず 平野八重子
冬蝶の只ひらひらと哀れなり 勝王騎
墨堤の色に草餅搗き上がる 小畑晴子