第55回関西俳句大会

令和2年5月23日(土)朝日生命ホールにおいて開催予定の関西俳句大会は新型コロナウイルスの影響拡大により中止となりました。

【朝日新聞社賞・関西俳句大会賞】

初湯出て莟のひらくやうにゐる    藤本厚子
 

【関西俳句大会賞】
鮫の目のひかり失ふまで撲てり    廣波青
猪かつぐ男に道をゆづりけり    常澤俶子
射止めたる猪より犬を引き離す    小津溢瓶
押さへたる水が重たし箱眼鏡    広岡育子
羅を畳みて色の現はるる    江戸としえ
百歳に励まされたる年賀状    栁瀬彩子
残心を解き白息の豊かなる    金津やよい
紙を漉く胸のクルスを揺らしつつ    佐藤三千子

南うみを特選
鮫の目のひかり失ふまで撲てり 廣波青
攫はるる夢湯たんぽの離れしか 中村与謝男
ためらひを見すれば鵜縄くひ込めり 堀瞳子

塩川雄三

もう一度声あげ神輿曲がりゆく 荒田眞智子
正座する事も覚えて春著の子 西村伸子
弾初の終はりて主婦に戻りけり 保理江順子

江崎紀和子選   
焼芋の不平等なる二分割 森宮保子
身の反りを力に凧の糸を引く いりやま勝英

田島和生選   
きのふけふ鸛舞ふ飾り臼 田中敏子
地の神へ日差やはらか福寿草 齊藤いさを
探梅やきのふと違ふ風を聞き 中川晴美

西池冬扇選   
猪かつぐ男に道をゆづりけり 常澤俶子
待春の大きな蝶のぬり絵かな 山内節子
錆釘に吊す箒や日脚伸ぶ 亀山みか月

柴田多鶴子   
須磨の灯の涼し明石の灯の涼し 今井文雄
御所の亀ならば鳴くかと待ちゐたり 神田昭次
あれこれを明日に延ばせる秋暑かな 上西美枝子

手拝裕任   
薬喰杉の美林に囲まれて 田邉富子
冬蝶を追ふ日の当るところまで 井上惠美子
柩型カプセルホテルにて朝寝 小林な里

三村純也   
地芝居の子役におはぎ届きけり 村田和司
競漕のゴール過ぎても漕ぎにけり 塚本治彦
手袋へビッグイシューの釣もらふ 山内茉莉

大石悦子選   
須磨よりも舞子に適ふ小松引 藤堂くにを
気嵐に淡く影置く鵠かな 福長まり
波郷の句声にして読む初暦 村田和司

能村研三   
兵法の波を壊さぬ初泳 出口洪子
渇筆に湧く力あり初硯 小川鶴枝

村上鞆彦
   
鮫の目のひかり失ふまで撲てり 廣波青
初湯出て莟のひらくやうにゐる 藤本厚子
猪かつぐ男に道をゆづりけり 常澤俶子

名村早智子選   
射止めたる猪より犬を引き離す 小津溢瓶
鮫の目のひかり失ふまで撲てり 廣波青
にはとりに牛に声かけ梅探る 樋口昇る

才野洋
亡き妻の影うすれゆく障子かな 河内きよし
冬深し土鈴の中に土の玉 出海純子

山尾玉藻
金峰山寺天より地より花吹雪く 倉田信司
初鰹焙る火の音うまさうな 秋山観水
古戦場跡に人住む冬菜畑 久保田まり子

森田純一郎

ばらばらに来て一斉に去る賀客 花木研二
太郎冠者余寒の板を踏みにけり 小菅美代子
初ミサや地の塩として余生生く 尾崎恵美子

西村和子
ばらばらに来て一斉に去る賀客 花木研二
屋根替や和尚みづから茅運び 山尾カツヨ
風にさへ見放されしか枯蓮 松本美佐子

石井いさお

鷹柱気流に形生れけり 小畑晴子
湯たんぽの位置を正すも介護かな 升田ヤス子
木蓮の開ききつたる翳りかな 米野てるみ

尾池和夫
代替りして軽と獅子頭 松岡惠美子
小春日の空気入れ足す車椅子 滝本香世
直角に折るる噴煙大根干す 福井英敏

有馬朗人
きのふけふ鸛舞ふ飾り臼 田中敏子
淵のあを極め国栖奏響きたる 平野淑子
百人の星の揃へる聖夜劇 小畑晴子

鷹羽狩行
おりる火にのぼりゆく火やお山焼 渡辺倫子
初鴨の百のかたまりほぐれ出す 井上あや子
満月を独り占めして雪達磨 加賀見智子

宮谷昌代
子の吉書翼あるかに揚がりけり 武田巨子
父の日の父をお洒落に仕立て上げ 太田妙子
涼しさや墨絵に生るる水の音 斎藤詳次

和田華凜
凍蝶のわが手かざせば動きけり 中村優江
生まれたる牛を囲みて年酒酌む 中村風信子
茶事すすみふくらみを増す寒椿 金子良子

茨木和生
受験生励ます駅のアナウンス 久米川幸子
柿すだれ越しに月山輝けり 本村幸子
先生と二人で掛くる巣箱かな 松村晋

柏原眠雨
聖夜劇藁まみれなる御子を抱く 小畑晴子
紙を漉く胸のクルスを揺らしつつ 佐藤三千子
羅を畳みて色の現はるる 江戸としえ

富吉浩
重なりて薄氷ひかり失へり 浅井陽子
羅を畳みて色の現はるる 江戸としえ
赤子泣く声もいれたき初写真 うすい明笛

古賀雪江

冬の蝶影を落とさぬ高さ飛ぶ 山近由美子
水底を日の立ちあがる蝌蚪の紐 田村唯子
駅伝へ送り出す日の寒卵 池田華甲

小河洋二
猪かつぐ男に道をゆづりけり 常澤俶子
毛糸編む時もめる母と祖母 小林孟司
射止めたる猪より犬を引き離す 小津溢瓶

宮田正和
押さへたる水が重たし箱眼鏡 広岡育子
裕明忌近づく雪の降りだす窓 市川薹子
故郷は海荒るる頃ふぐと汁 西尾敬一

德田千鶴子
這ひ這ひの子の脱走や縁小春 手塚泰子
真つ先に泣いて腕白卒業す 井村啓子
百歳に励まされたる年賀状 栁瀬彩子

朝妻力
残心を解き白息の豊かなる 金津やよい
母方の客ばかりなる花の内 中家桂子
秋津野の空の高さを鷹舞へり 中谷恵美子

柴田南海子

天窓をあふるる星や薬喰 蓮井いく子
羽ばたきの続く水面や春隣 貞許泰治
目瞑りて聴く谷音や梅二月 津田京子

田中春生
鮫の目のひかり失ふまで撲てり 廣波青
初湯出て莟のひらくやうにゐる 藤本厚子
攫はるる夢湯たんぽの離れしか 中村与謝男

大橋晄
篁の葉擦れ爽やかエジソン碑 田中敏子
卒業生一同空へありがたう 渡里トモ枝
ゆたかなる大地の言葉滴れり 間谷雅代

岩城久治

初湯出て莟のひらくやうにゐる 藤本厚子
草石蚕てふ字もけつたいな縁起物 中村未有
冬帽子レンブラントの目の深し 藪上英子

井上弘美
海中へ続く山脈鰹潮 浅井陽子
白山の雪を仕込みて氷室閉づ 加畑霜子
弔問客去りて時雨の残りけり 岡田邦男

大串章
長旅の出雲泊りや寒蜆 樋口昇る
老いてなほ思ひ貫く去年今年 住田うしほ
笑む友の遺影に話したき夜長 脇坂かよ子

小路智壽子
初ミサや地の塩として余生生く 尾崎恵美子
百歳に励まされたる年賀状 栁瀬彩子
初蹴鞠声も胡蝶の舞ふごとし 大野利江