第56回関西俳句大会

令和3年5月22日（土）朝日生命ホールにおいて開催予定の関西俳句大会は新型コロナウイルスの影響拡大により中止となりました。

【朝日新聞社賞・関西俳句大会賞】

にこにこと選ばせてをり苗木売　　　中村未有
 

【関西俳句大会賞】
裸子をとり逃がしては喜ばす　　　大槻美千江
春風や呼べばくるりと一輪車　　　貞許泰治
酔ふほどになまはげらしくなりにけり　　　塚本治彦
踊りつつ抜けをどりつつ輪へ戻る　　　今井文雄
雪吊の髻が放つ百の縄　　　渡辺美智代
あと一便待つ駅長の霜夜かな　　　渡辺美智代
落ち葉掃くところ掃かずにおくところ　　　野口喜久子
まつろはぬ民の裔なり冬田打つ　　　栗林白霜
猪捌く湯気に眼鏡の曇りけり　　　小畑晴子
充電も放電もして日向ぼこ　　　堀上慶子


江崎紀和子特選
にこにこと選ばせてをり苗木売　　　中村未有
狼狽を隠し切れざるサングラス　　　津田京子
名作は旧仮名遣十三夜　　　長田久子

南うみを特選
遅れ来てやたら大声亥の子唄　　　櫛部天思
身ぐるみを剥ぐとは羊刈ることか　　　森田幸夫
雪吊の髻が放つ百の縄　　　渡辺美智代

茨木和生特選
朝日まだ届かざる谿山女釣　　　石橋康徳
煤払ひ神も仏も水で拭く　　　廣波青

宮谷昌代特選
酔ふほどになまはげらしくなりにけり　　　塚本治彦
死ぬたびに喜ばれたり水鉄砲　　　太田健嗣
煤逃や書舗を出てまた書舗に入る　　　森山久代

三村純也特選
あだ名もてかかる掛声村芝居　　　富田範保
充電も放電もして日向ぼこ　　　堀上慶子
手鞠突く京の通り名彈ませて　　　福田えいじ

名村早智子特選
皆笑ふつもりで囲む福笑　　　井村啓子
寂しさの散らばつてゐる冬桜　　　野坂潭
落ち葉掃くところ掃かずにおくところ　　　野口喜久子

大石悦子特選
戦争のはじまつた日も茶が咲いて　　　田中みつを
雪吊の髻が放つ百の縄　　　渡辺美智代
俳号で妻に呼ばるる梅一輪　　　島本方城

塩川雄三特選
いましめてなだめて卒寿野火を守る　　　小畑晴子
マスクして変はらぬ母でありにけり　　　松本愛子
冷蔵庫妻には妻の世界あり　　　田中清司

柴田多鶴子特選
にこにこと選ばせてをり苗木売　　　中村未有
裸子をとり逃がしては喜ばす　　　大槻美千江
今日の色昨日に重ね散紅葉　　　辻幸子

和田華凜特選
拾ひたる落蟬ほてりゐたりけり　　　貞許泰治
いつぱしの老女となりぬ初写真　　　小林伊久子
河豚食うてほなさいならと別れけり　　　上野鮎太

西村和子特選
汗拭ひをり本当は泣いてをり　　　葛籠堅助
春風や呼べばくるりと一輪車　　　貞許泰治
まつろはぬ民の裔なり冬田打つ　　　栗林白霜

古賀雪江特選
雪吊の髻が放つ百の縄　　　渡辺美智代
野良に開く暮の時報や日脚伸ぶ　　　神藤寛子
寒柝の灯る家には強く打つ　　　秋山観水

才野洋特選
農を継ぐ人を探してゐる案山子　　　池田綏静
そこここに隔てある世の関東煮　　　百田登起枝
紙芝居の続きは明日春近し　　　赤利令

柏原眠雨特選
渾身の童女の話アマリリス　　　中川歓子
十二月八日灯油の臭き朝　　　棟方武城
つばめ来る町のベトナム料理店　　　内田茂


宮田正和特選
まつろはぬ民の裔なり冬田打つ　　　栗林白霜
引く鳥の声の一つとなりゆけり　　　岩水節子
断崖に残る貝塚鳥渡る　　　松村正之

石井いさお特選
猪捌く湯気に眼鏡の曇りけり　　　小畑晴子
滴りの滴りを待つ一呼吸　　　荒木信夫
稚の寝て目秤で編む毛糸帽　　　島本美紀

手拝裕任特選
雀らも同じ日向に福寿草　　　景山典子
買初の本に萌黄の遊び紙　　　上西美枝子
探梅や昔木馬の路辿り　　　長谷川紀美子

田島和生特選
屋根を越す雪の底より夕餉の灯　　　平野透
石舞台出でてこの世の花吹雪　　　田島もり
大仏に天井低き大暑かな　　　福田嫩子

朝妻力特選
裸子をとり逃がしては喜ばす　　　大槻美千江
磨硝子越の秋日にミシン踏む　　　荒木かず枝
春風や呼べばくるりと一輪車　　　貞許泰治

村上鞆彦特選
落ち葉掃くところ掃かずにおくところ　　　野口喜久子
信号の赤に西日が当りけり　　　葛籠堅助
充電も放電もして日向ぼこ　　　堀上慶子

能村研三特選
ぶらんこを漕ぐ過去未来過去未来　　　山岡正幸
峻嶺に生糸のごとき鹿の声　　　永野壽一
黒土は命の光木の根開く　　　清水呑舟

小河洋二特選
山に山重なる村に薬喰ひ　　　坂口恵子
霧晴れて杉百幹の目覚めかな　　　讓尾三枝子
うす紅の喉をふるはせ燕の子　　　中井留美子

井上弘美特選
風はみな音となりけり虎落笛　　　古川和子
花御堂飾る野の花野の湿り　　　西田むつ子
シーソーの子を夕焼に預けたる　　　大島幸男

山尾玉藻特選
猪捌く湯気に眼鏡の曇りけり　　　小畑晴子
黄桃缶パイナツプル缶女正月　　　島野紀子
むかし船は星を恃みに大枯野　　　蘭定かず子

富吉浩特選
五十年会はず忘れず年賀状　　　森山久代
踊りつつ抜けをどりつつ輪へ戻る　　　今井文雄
雪捨場だんだん遠くなりにけり　　　野口喜久子

岩城久治特選
マネキンの素肌にかける毛皮かな　　　能勢ゆり
あと一便待つ駅長の霜夜かな　　　渡辺美智代
皆笑ふつもりで囲む福笑　　　井村啓子

田中春生特選
力瘤連ね蓮根現はるる　　　松村正之
たそがれの女涼しき手を持てり　　　倉本節子
一筋の黒髪残し雪女郎　　　角野京子

德田千鶴子特選
蟷螂の枯れて薄日を残しけり　　　福井英敏
白鳥の少し汚れて生き易き　　　大谷昌子
蔵書捨て古き八月捨てにけり　　　池田華甲

森田純一郎特選
どこからも海見え砂糖黍を刈る　　　富田範保
霜柱さくさく崩し登校す　　　森山久代
阪神忌あの朝の空今朝の空　　　小野勝弘

西池冬扇特選
マスクして河馬の欠伸を見入りたり　　　山口登
托鉢僧門に高野の雪のこし　　　曽根澄子
鍬初土ひと握り嗅いでみる　　　藤田啓子

小路智壽子特選
早苗饗や祖父先づ馬を労ひぬ　　　泉田欽司
地方紙に旧師の叙勲新酒酌む　　　西村伸子
水軍の隠れ浦とや蜜柑熟る　　　富田範保

大串章特選
水重ね音重ね紙漉きあがる　　　長谷川宏
耕せり弥生遺跡の地続きに　　　渡辺倫子
峡十戸五戸は廃屋梅探る　　　西尾敬一

尾池和夫特選
枇杷咲くや外海沿ひに耶蘇の村　　　小都妙子
秋嶺の低きところへ塩の道　　　尾池葉子
農を継ぐ人を探してゐる案山子　　　池田綏静