第58回関西俳句大会

日時:令和5年5月27日
場所:大阪・中央電気倶楽部ホール

【関西俳句大会賞】
散る牡丹見てゐて何もしてやれぬ   藤堂くにを
新涼や仔牛に小指ほどの角   田中愛子
乾くほど風のかたちに掛大根   三ツ矢龍美
輪をかけて弟子も無口や松手入   坂口惠子
膝元の歌留多油断をしてをりぬ   三宅崇代
舵棒を子に任せたる漁始   今井文雄
耳奥に波音のある晩夏かな   津田京子
宵積みを高く初荷の吉野杉   池田美砂子
十二月八日湯呑みの長き影   芳野珠江
失ひしものは数へず根深汁   中川計介
子は伐つてしまふであらう松手入   小西尚美

江崎紀和子特選
散る牡丹見てゐて何もしてやれぬ   藤堂くにを
いつよりか悲劇は嫌ひ初芝居   森山久代
失ひしものは数へず根深汁   中川計介

和田華凛特選

その上の光を追ひて鳥雲に   詫間えりこ
今年米なり手にすくひ手ににぎる   八嶋昭男
ネオン消え道頓堀は月の川   岡本戎

南うみを特選

首長くして遠足を待つ麒麟   端あつ子
交番にうなだれてゐる冬帽子   平万紀子
足踏みに仏壇揺るる生身剥   石井洋子

谷口智行特選
十二月八日湯呑みの長き影   芳野珠江
狩の犬従はぬ貌見せにけり   大谷昌子

宮谷昌代特選
舵棒を子に任せたる漁始   今井文雄
輪をかけて弟子も無口や松手入   坂口惠子
海亀の子を見送れり観光課   小林陸人

名村早智子特選
宵積みを高く初荷の吉野杉   池田美砂子
太陽に選ばれをりし夏の花   池田純子
結論はいつもうやむや葛湯吹く   角野京子

宮田正和特選
乾くほど風のかたちに掛大根   三ツ矢龍美
牛鳴けば雑子短かく応へけり   山内繭彦
教材は虫喰ひ俳句夜学校   中川悦子

野中亮介特選
右手挙ぐる埴輸天皇誕生日   宮本啓子
白朮火を回す比奈夫の句碑の前   藤堂くにを
除雪車と除雪隊員整列す   大島幸男

小路智壽子特選
裟釣や馬穴にひとりづつの海   平尾美智男
論敵と差しで熱燗果てもなく   猪瀬和男
海苔篊の浮標のたりと須磨の海   越智巌

村上靹彦特選
十二月八日湯呑みの長き影   芳野珠江
冬波のうねりを前に画架を組む   師岡洋子

石井いさお特選

猟銃を終ひし箱に護符を貼る   尾崎恵美子
凧触るる成層圏の端   島田由加
粥占の帰りにもらふ農暦   藤田壽穂

才野洋特選
耳奥に波音のある晩夏かな   津田京子
レノン聴く雪とめどなくとめどなく   小坂優美子
弓袋肩に春著の女学生   廣見知子

西村和子特選
舵棒を子に任せたる漁始   今井文雄
輪をかけて弟子も無口や松手入   坂口惠子
セーターを労るやうに畳みけり   吉田喬

小河洋二特選
膝元の歌留多油断をしてをりぬ   三宅崇代
新涼や仔牛に小指ほどの角   田中愛子
指笛を吹いて猟犬呼び戻す   嶋田嘉鶴子

能村研三特選
乾くほど風のかたちに掛大根   三ツ矢龍美
鳥雲にとりのかたちの雲いくつ   三好康夫
凍裂と判る響きや永平寺   古谷彰宏

手拝裕任特選
宵積みを高く初荷の吉野杉   池田美砂子
冬ざれの捨て看板に夢の文字   若林白扇
咳の子を鬼が見逃す隠れん坊   池田綬静

田中春生特選

濡れてゐることのやすらぎ桜貝   田中清司
梅の香や声美しく老いたまふ   倉本節子
やはらかく使ふ箒や夕桜   西田洋

朝妻力特選

弓立てて改札ぬくる春著かな   渡辺美智代
小春日や極楽までは歩けさう   渡里トモ枝
うららかや母音を伸ばす里言葉   景山典子

森田純一郎特選
耳奥に波音のある晩夏かな   津田京子
ただ置いてあるだけと言ふ囮籠   小寺昌平
出身は共に雪国おでん酒   小都妙子

柴田多鶴子特選

角切りの二回りほどさせ捕ふ   今井文雄
聖夜弥撒母国はるかに看護生   師岡洋子
咲き終へしものも彩なる大花野   福増節子

片山由美子特選
散る牡丹見てゐて何もしてやれぬ   藤堂くにを
失ひしものは数へず根深汁   中川計介
クリスマスイブやはらかき子の寝息   岡村美江

富吉浩特選
子は伐つてしまふであらう松手入   小西尚美
蚊遣香不意に看取りの終りたる   小寺昌平
闘病を知らず別れし花の下   松井洋子

山尾玉藻特選
にぎやかに空寂しめる帰燕かな   一條文子
一渓にゐて梅ヶ香の壼中たり   村上直子
神木に眼窩の深き蛇の衣   田邉富子

古賀雪江特選
いかり肩宥むるように春ショール   一條文子
夜の秋の灯を寄せ介護申請書   田中愛子
刈盧の寝かせて丈の揃ひけり   平尾美智男

三村純也特選
膝元の歌留多油断をしてをりぬ   三宅崇代
ネオン消え道頓堀は月の川   岡本戎
末の娘にボーイフレンド梅ふふむ   新村美那子

田島和生特選
漏刻の水舐めてゐる揚羽蝶   古賀勇理央
子供らは背を比べあひ盆の家   桑原里美
メロンパン匂ふ鞄の夜学生   平尾美智男

岩城久治特選

手袋を忘れてゆきし手を思ふ   徳永真弓
散る牡丹見てゐて何もしてやれぬ   藤堂くにを
品書きの前の風鈴鳴りにけり   杉山太郎

西池冬扇特選
行く手にはティラノサウルス夏休   平尾美智男
鳩の羽毛舞ふ炎天の爆心地   石橋康徳
廻し剥く林檎地球に人住みて   田辺須野

德田千鶴子特選
空海の渡海の天を鷹渡る   尾崎恵美子
蒲団干し夢の嵩ほど膨らまず   谷中弘子
膝をつく殉教の像緑さす   井村啓子

塩川雄三特選曇

紅引いて回診を待つ初鏡   岡田邦男
苗床を覗きて苗の声を聞く   佐藤恵美子
老い二人四の五の言うて古茶を汲む   長谷川喜代子

井上弘美特選
椎落葉踏めば太古の土匂ふ   水間千鶴子
融雪剤撒き調教の馬を曳く   渡辺美智代
終ひ湯に浮く年豆のふたつほど   山内茉莉

尾池和夫特選
神の留守女性宮司は育児中   渡辺佳子
植ゑながら子らに伝ふる田植歌   桑原里美
闘病を知らず別れし花の下   松井洋子

大串章特選
冬ごもり十七音の私小説   古川武人
翳る山日当る山や探梅行   光田道子
銭湯のある町が好き夏休み   三ツ矢龍美

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