第20回俳句大賞

【大 賞】
月山と書きて涼しき机かな  (鷹)帆刈夕木

 【準 賞】
出立の蹄に塩や祭馬  (百鳥)鈴木 綾子

今井聖特選
水槽をほほゑみながら鱏降下  (知音)岡本尚子
峰雲やさらりと子宮無きことを  (街・はるもにあ)玉田憲子
ブラインドの隙間のゆがみ夏の行く  (夕凪)淺田洋子

大石悦子特選
勝ち負けを言へば負け組亀鳴けり  (蕗)木下恕子
鉄骨を組む峯雲に足掛けて  (幡)山中谷勝子
母泣いてゐたかもしれぬ洗ひ髪  (圓)村田まみよ

大串章特選
夏怒濤ほとけ姿の奇巌立つ  (万象)山本麓潮
七夕竹潜りて少女退院す  (きたごち)屋代ひろ子
空港に世界の時刻夏休み  (青山)坂東文子

柏原眠雨特選
教室の朝の音読夏つばめ  (山繭)澤井とき子
土筆摘むためにまた行く夫の墓  (七曜)嶋津節
馬の墓拝みて代を掻きはじむ  (駒草)寺島ただし

小島健特選
水色の風のくるまで水を打つ  (青山)吉田ひろし
胎の子と白詰草の野に座る  (天為)矢野玲奈
月山と書きて涼しき机かな  (鷹)帆刈夕木

斎藤夏風特選
うから皆彼岸にあれど初鰹  (無所属)岩本淑
水の輪に腕を深く蓴菜採り  (馬醉木)木原則子
草の花ばかりが白し津波あと  (燎)蔵多得三郎

西嶋あさ子特選
観音の思惟の千年滴れり  (青嶺)橘京子
蜩の漣となる山河かな  (花暦)高久智恵江
母の名を砂に書く子や星祭  (蕗)片岡学

野中亮介特選
ふところの子犬も濡れて夕立あと  (天頂)横山幸嗣
鈍行を鈍行が待つ吹雪かな  (門)杉田とみ子
動くとも動かざるとも海鼠かな  (けごん)加藤多美子