第29回俳句大賞
【大 賞】
ほうたると同じ水飲み老いにけり (出雲)栗原稜歩
【準 賞】
被爆樹の影より抜けて瑠璃揚羽 (馬醉木)森藤千鶴
【プラチナ賞】
熊撃つて後は優しきまたぎの眼 (航)蒲田吟竜
石嶌岳特選
大滝の水一枚となりて落つ (諷詠)福島津根子
のどけしや夫の日本語吾の英語 (風の道)チョウコ・ビーン
ふはふはと一日のすぐる花あふち (櫟)石塚美穂
古賀雪江特選
石ひとつ代田へ水を曲げにけり (山繭)米野てるみ
一輌に閉ざす踏切麦の秋(馬醉木・花鶏)岡汀子
送火の消えてしばらく風を聴く (ひいらぎ)竹内柳影
辻恵美子特選
海の色インクにのせて夏見舞 (伊吹嶺)大島知津
苔の花ルーペの中に深き森 (創生)髙垣わこ
四万六千日一票投じけり (百鳥)山本三樹夫
西山睦特選
父の日の靴揃へても傾きぬ (沖)甲州千草
風鈴や清貧われを米寿にす 斎藤くめお
外套のまま往診の脈を取る (年輪)西田誠
橋本榮治特選
ほうたると同じ水飲み老いにけり (出雲)栗原稜歩
映像は無音のことば原爆忌 (春野)西原仁
猪打ちの眼とがつてきたりけり (空)永淵惠子
松尾隆信特選
黒板に補助線一本梅雨あがる (閏)伊澤やすゑ
バス停の文字の薄れや麦の秋 新井文子
鉄橋の響きのなかを帰省せり (出航)森岡正作
松岡隆子特選
号外へ手がつぎつぎと西日濃し(汀)岸根明
戦なき真昼へ開く白日傘(鴻)中村世都
草刈機石はね上げて進みけり(一葦)鈴木智子
南うみを特選
茅の輪よりはみ出す禾の勢ひかな (秀)花房礼子
鉾車地鳴り由々しき辻廻し (若葉)山岡仁美子
箱庭の工事に使ふピンセット (諷詠)太田公子