俳句カレンダー鑑賞 令和6年1月
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掲句は昭和62年、城端別院 善徳寺二句の前書きのあるうちの一句である。あと一句は〈寺にして城の構への雪囲〉ともに第二句集『蜃気楼』に所収。
大学院を卒えて富山県魚津の短大へ赴任。大阪に生まれ、東京に学び、初めての北陸暮しである。若い作者にとって目にするすべてが新鮮であったであろう。海と山がせまる大自然により大いに詩嚢を肥やされたようだ。
雪卸しは雪国の生活では欠かせない暮しの一つである。経験のない雪卸し、雪の怖さを身をもって体験されたに違いない。そんなときでもふと目にした昼の月を「あはあは」と詩情豊かに詠いあげ若々しく口誦性のある作品となった。
この句は平成15年、城端に第一句碑となっている。冬はすっぽり雪を冠る年もあるらしい。
(西村 妙子)あはゝと昼の月あり雪卸す
三村純也
社団法人俳人協会 俳句文学館632号より