俳句カレンダー鑑賞 令和2年2月
- 俳句カレンダー鑑賞 2月
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第二句集『青木の実』所収、平成17年作。
岡本眸師の写真集『四季逍遙』の撮影に付き添い、富山行となった折の所産である。 「早月川は川幅一杯に荒波が立ち、恐ろしいほどの勢いで河口へ向かって流れていた」と自解にある。作品の眼目は〈音たちあがる〉である。波たちあがる、では凡庸になるところ、音一点に絞って読者の想像を誘う。立山連峰・剱岳に水源を発した激流が臨場感に溢れた一句である。極めてシンプルな詠いようも心地よい。
眸師の存命中は「朝」誌の編集長として長年師を支えた作者だが、同時作の〈合流のいま一塊の雪解光 眸〉等々と対をなすようなこの作品で師と永い絆が結ばれた。
現在「栞」の代表として、月々発表する作品に、眸師の精神が色濃いのも不思議ではない。(木内 憲子)
川幅に音たちあがる雪解川
松岡隆子
社団法人俳人協会 俳句文学館586号より