俳句カレンダー鑑賞 令和2年4月
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第3句集『麗日』所収。大原野は京都西南郊外の地名。花の寺として知られる勝持寺を訪ねた際の作。筆者もこの旅に同行した。
鳥羽上皇に仕えていた佐藤義清は、この寺で出家し西行と名を改めたという。漂泊の旅はこの地から始まった。境内では西行桜と呼ばれるゆかりの一株をはじめ、多くの桜が蕾を膨らませていた。
その後、歩いて隣の大原野神社へ。こちらは在原業平ゆかりの社で、清和天皇の女御となったかつての恋人、高子に随伴して参詣したという。業平は晩年をこの地で過ごしたとも伝わる。
境内にほど近い茶屋で名物の草餅をいただいた。蓬の香たっぷりの柔らかい餅を頬張り、旅先にあって安堵したことを「大き」と詠んだのだろう。
二人の歌人たちにも旅先で饗され、寛いだ時があったことを願いながら。(藤田るりこ)大原野大き草餅饗されて
藤田直子
社団法人俳人協会 俳句文学館588号より