俳句カレンダー鑑賞 令和3年2月
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きらきらと雨は磯打つさより舟
草間時彦第一句集『中年』所収、昭和31年作。
大正9年生れ、「私の青春は戦争と病気」の作者は30歳から本気になって俳句を始め、父時光が属していた「馬醉木」に入門、水原秋櫻子に師事。句集(40年刊)の後記には石田波郷・石塚友二の名も挙がる。その4年後波郷の逝去に遭うことを思えば、俳句の楽しさ、「馬醉木時代の古き友、俳人協会の諸先輩その他」への感謝の言葉も含め、その後38年の俳句人生を通して、よき時代だった第一句集である。
掲句に「さよりのような美しい魚は、それを取り巻く海の景も美しくなければならない。舟も美しく、そして、俳句も美しくありたい」と自註。 オノマトペ「きらきらと」の使用は、しかも雨には珍しく、効果的だ。「さより」の仮名書きももっともなところだ。
同じ31年の作に〈秋鯖や上司罵るために酔ふ〉がありサラリーマン俳句として知られるが、美や粋、洒脱は第8句集までの終生の作句姿勢から失せることはなかった。
(西嶋あさ子)社団法人俳人協会 俳句文学館597号より