俳句カレンダー鑑賞 令和3年4月
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人はみななにかにはげみ初桜
深見けん二第四句集『花鳥来』(平成3年刊)所収、昭和60年作。 作者は大正11年生まれであるので、来年百歳をむかえる。虚子、青邨に師事し、虚子の許では、「花鳥諷詠」「客観写生」をひたすらに学んだ。 掲句は穏やかに、且つ平明に叙されてはいるが、人間の本質を突いている。 人は誰でも希望を持って前に進みたいと願っている。その希望を叶えるために人は、一心に何かに励むのである。前向きな、それでいて深い余韻を覚える句である。それは「初桜」を見た時の作者の感動に共鳴することができるからである。 作句の信条として、「季題発想」を説いた虚子の教えを深く心に刻み、常に季題と向き合っている姿勢は、百歳を目前にしても一向に揺るぎがない。〈青林檎旅情慰むべくもなく〉(第一句集『父子唱和』昭和31年刊)。虚子が、小諸で行った、若者を鍛える稽古会での作と共に代表句である。(山田 閏子) 社団法人俳人協会 俳句文学館599号より