俳句カレンダー鑑賞 令和3年10月
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第二句集『鉄線』所収、昭和48年の作品である。銀座に税理士事務所を構え、時折、顧問先の会社へ通った。東金線、成東辺りから見た九十九里である。「早稻田刈り」と敢えて言ったところ、早場米地帯に相応しい。やや、海には遠いが、稲が刈られると、見通しが利き、防風林の向こうに白波の九十九里が見える。景を大きくとらえて爽快だ。大野林火先生なら「毛穴がひらく」と賞賛したにちがいない。
実はこの年頃、身辺尋常ではなかった。夫人は癌の余命宣告を受け、翌1月4日に亡くなっている。また法人化して間もなかった俳人協会の理事として、俳句文学館設立の諸事に奔走している。
九十九里に通うのはしばしの憩い、楽しみであったようだ。
多忙の中でのオアシスのような一句である。
(太田 土男)早稲田刈り見通しにされ九十九里
松崎鉄之介
社団法人俳人協会 俳句文学館605号より