俳句カレンダー鑑賞 令和4年2月
- 俳句カレンダー鑑賞 2月
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かつて、〈しやぼん玉兄弟髪の色違ふ〉とその個性を慈しみつつ育て、やがて立派に成長した兄弟。菠薐草の青々とした様は、今や働き盛りの二人の姿と重なる。
血脈や血統を連想させる菠薐草は、母と息子の絆の象徴とも言えるだろう。
作者の30代半ばの作である。〈菠薐草スープよ煮えよ子よ癒えよ〉が思い出される。風邪の床にある子どもの快癒をひたすら祈る、若い母親の健気な句である。
菠薐草の季語でわが子を詠んだ点は同じだが、30年の月日を経て作者の母親としての心持ちは大きく変化していることに気付く。
掲句からは、二人の息子を育てあげた自負心、さらには人生の円熟期にさしかかった作者の感慨が伝わってくる。第8句集『わが桜』所収。
(松枝真理子)菠薐草男の子ふたりに血を分かち
西村和子
社団法人俳人協会 俳句文学館609号より