俳句カレンダー鑑賞  令和4年5月

俳句カレンダー鑑賞 5月
列をなし卯浪とどろく九十九里 小倉英男

 平成26年の「春嶺」一泊二日の吟行会での作である。
 一日目は、伊藤佐千夫生家・高村光太郎の「智恵子詩碑」・九十九里浜を吟行した。その夜は芥川龍之介縁りの「一宮館」に一泊。翌日は上総一の宮・飯縄寺・太東岬を巡った。
 掲出の句は、作者の第六句集『あるがまま』の「九十九里 七句」の内に収められている。
 作者は、弓なりに連なる九十九里浜を目指し、列をなして響もす卯浪のスケールの大きさに胸を打たれたのであろう。
 平明な表現措辞のうちに調べも高まり眼前に景が見事に立ちあがっている。いかにも太平洋の卯浪であるという臨場感を覚える。
 同日作の〈浜昼顔風紋すこしづつ動き〉。
 これは九十九里浜を写実で捉えており注目した。
(片岡 幹男)
列をなし卯浪とどろく九十九里

小倉英男

 社団法人俳人協会 俳句文学館612号より