俳句カレンダー鑑賞 令和4年9月
- 俳句カレンダー鑑賞 9月
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大高霧海師は今年米寿を迎えられた。
二代目主宰として「風の道」を率いて17年、今も主宰としてのみならず多方面においてご活躍、益々意気軒昂でおられる。
掲句は修善寺に逗留されたときの作。自然豊かな秋の修善寺は、夜ともなれば虫時雨の大音響に包まれ、まるで胎内に居るかのようだ。そのとき、ふいに鈴虫が鳴き出した。すると、不思議なことに他の虫の音は皆遠ざかり、いつしか凛とした鈴虫の声だけが闇を支配してゆく。その声は、女王のような威厳と幽界からの使者のような妖しさに満ち、聴いている誰もがすっかり魅了されてしまう。
師も宿に寛ぎながら、そんな鈴虫の独壇場の世界に翻弄され、癒やされ、そしてこの句を授かった。
俳句は対象に心を寄せて見詰めていれば、きっと授かるというお手本のような句である。
(渡邉美奈子)鈴虫や闇の舞台をほしいまま
大高霧海
社団法人俳人協会 俳句文学館616号より