俳句カレンダー鑑賞 令和4年10月
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「猿酒」は猿が木の洞に木の実を隠し、それが熟成して酒になったというもので、江戸時代から使われていた季語だが、令和の今その存在はかなり怪しい。
山尾玉藻は令和5年5月号で1000号を迎える「火星」の3代目主宰である。初代主宰岡本圭岳の長女で、圭岳には酒に関する多くの逸話が残っている。また夫で「最後の無頼派」と呼ばれた亡き岡本高明も酒をこよなく愛した俳人だった。
玉藻主宰は好奇心をお持ちだが、少し怖がりで慎重な質である。中七下五から「軽み」のある大人のやり取りが窺え、双方の手の動きや表情、場の騒めきなどが生き生きと見えてくる。
しかし、掲句は自在に心を解放し、楽しみつつ虚に遊んだ一句であろう。そして読み手もその快楽を相伴することになる。
(大山 文子)猿酒を信ずる猪口をさし出せり
山尾玉藻
社団法人俳人協会 俳句文学館617号より