俳句カレンダー鑑賞  令和4年11月

俳句カレンダー鑑賞 11月
立冬やガスに点火をすればポポ 下鉢清子

 一読、その読み易さとリズム感に魅せられた。
 立冬の頃になると冬の季節風が吹き始め日暮が早まり少し冷たくなる。
 「立冬や」の上五の切れが、それを語り、波郷の韻文精神を垣間見る。
 厨に立ち先ずガスに点火、ガスに火がつく。そこをすかさず「ポポ」という措辞で締めた。このオノマトペの「ポポ」が一句の要である。
 句の良し悪しは下五で決まるというが、正に掲句はその範といえる。
 作者は、今年めでたくも白寿を迎えられた。日頃から病と闘い乍らのご活躍は、私の尊崇止まざる所である。
 掲句は、平成29年刊行の第10句集から取られた。あとがきの中の「森羅万象の中、生活の中から詩のことばを得たい思いは変わることはありません」に心を打たれた。
(髙平 嘉幸)
立冬やガスに点火をすればポポ

下鉢清子

 社団法人俳人協会 俳句文学館618号より