俳句カレンダー鑑賞 令和4年12月
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世を救ふ救世軍の鍋の冷
中原道夫掲句の救世軍による社会鍋は、歳末の風物詩である。その助け合いの呼掛けに、進んで応分の布施が為されたであろう。
「鍋の冷」の措辞は、冷えきった大気に因る鍋そのものの冷え。意外や、鍋の中の貧弱なるを窺知し、別けても見て見ぬ振りをしたる世の冷たさに揶揄の意を寓している。 先生の書は、書家も顔負けの表現力。通り一遍の綺麗事に終るものとは異なり、独特のデフォルメを以てして、もしや判読し難き処有るか。
しかし、胸中の情懐を筆に托して走らず、渋滞せず、躍動して墨痕の一部の隙を見せず、余白に解放と緊張を以て収斂を得て見事である。
色紙への揮毫は、殊に難しいと云われている。
限られた紙面に、大らかな独自の味わいー「破格の美」を湛える眼と技を兼備えた作。蓋し、亦た存在感の有る俳書と云えよう。
(和栗 痴龍)社団法人俳人協会 俳句文学館619号より