俳句カレンダー鑑賞 令和5年3月
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作者が生まれ育ったのは三重県一誌郡美杉村川上(現在の津市美杉町)。 雲出川源流に位置する当地はかなりの山村で、空気や水の旨さは言わずもがな。早春の野草摘みは作者の母親のみならず、村人の誰もがしたことであろう。そんな当たり前の早春の訪れの光景を、母親が年老いてからは見られなくなった。
自分が蓬を摘んでみようと思った時、まず思い付いたのは母親がいつも摘んでいた辺りだった。どこにでも生えている蓬ではあるが、その辺りが一番美味しい蓬である事を母親は知っていたはずだから。
蓬を摘みながら母親はどんな思いで毎年毎年摘んでいたのだろうか。蓬を摘む手を通して、手際よく摘んでいた母親の胸中を思いやる作者。
今ではこんな風景もほぼ見られなくなってしまった。
(小寺 篤子)いつも母摘みしあたりの蓬摘む
名村早智子
社団法人俳人協会 俳句文学館622号より