俳句カレンダー鑑賞 令和5年7月
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青林檎旅情慰むべくもなく
深見けん二第一句集『父子唱和』所収。昭和23年、作者26歳の作である。
「青林檎」は夏の季題で、青色の早生の林檎。さくさくとした歯応えと爽やかな酸味がある。
作者は旅にあり、独り物思いに沈んでいる。掌には一個の「青林檎」があるが、その酸っぱい実を囓ってみても、漠然とした旅の侘しさは少しも晴れないというもの。
作者は、当時、高濱虚子の膝下で作句に励んでいたが、掲句は虚子の疎開先小諸で開かれた「小諸稽古会」に投じられたもの。小諸へ向かう汽車の中での作であろう。
翌24年1月の「ホトトギス」雑詠欄の次席となり、虚子は「旅情は侘しい。青い林檎はあるが、それがあるが為に殊に侘しい」と評している。
この句は、戦後間もないという時代背景の中で理解されるべきだが、青年期のアンニュイな主情を、抑制の効いた調べで詠っており、けん二の句境を生涯貫く、瑞瑞しくもの静かな抒情を湛えた句である。
(桑本 螢生)社団法人俳人協会 俳句文学館626号より