俳句カレンダー鑑賞 令和5年10月
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鹿・鹿・鹿とスロットマシンで3枚の絵が揃うかのような天啓を得た掲句は、安芸の宮島、厳島神社での吟行詠。五七五の頭すべてに同じ言葉を置き、軽快なリズムを刻む愉快な句だ。
鹿せんべいが鹿の色であるという発見も見事であるが、畳みかけるような音の効果で、鹿せんべいを手にした作者めがけて集まる鹿たちの匂いも満ちてくるようだ。
韻律を楽しむというのも短詩型ならでは。作者にとってこれは感覚的かつ意図的である。声に出したときのテンポのよさに忘れがたく、奈良公園で思わずこの句を口ずさんでしまう私は、既に作者の手中に落ちていると言えよう。
宮島ではかつて鹿せんべいが売られていたが、今はすべての餌やりが禁止されている。ご注意。第3句集『福』所収。
(芥 ゆかり)鹿にやる鹿せんべいは鹿の色
福永法弘
社団法人俳人協会 俳句文学館629号より