俳句カレンダー鑑賞 令和5年12月
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大欅ことしの枯を全うす
西嶋あさ子作者には欅を詠んだ句が多く、そのなかには〈綿虫か欅か生まれかはるなら〉という句もある。欅が好きとおっしゃる証と言えよう。
平成24年に心臓の大手術を受けられて以来、脊柱管狭窄症などの痛みを抱えながらも、安住敦を慕う人たちで続けて来た同人誌「瀝」を平成31年からは個人誌として執筆活動に打ち込んでおられる。その「瀝」に発表される俳句、評論、随筆には作者の本音が滲んでおり、私以外にも愛読者が多いことを疑わない。
昨年、俳人協会創立60周年記念式典で作者は功労者表彰を受けた。歩くのも大変のようにお見受けしたが、壇上での挨拶に漲るような力を感じ、まさに協会の歴史を作って来られたお一人であると感銘を深くした。
掲句は平成30年作(第5句集『瀝』所収)。落葉高木の欅は硬く強い植物で、寿命も長いと言われ、年ごとに枯を全うする姿は新緑や紅葉の時期の美しさをも自ずから想起させる。そんな一年一年を堅実に生きる大欅の姿に、豊かな精神を発揮し続ける作者の人生が重なって見える。
(寺島ただし)社団法人俳人協会 俳句文学館631号より