俳句カレンダー鑑賞 令和6年4月
- 俳句カレンダー鑑賞 4月
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第3句集『別の朝』所収。口誦性のある対句表現に特徴がある。「別の町別の朝」の措辞は漂泊の世界とは趣を異にする。しなやかな生き方の象徴として働いているようだ。日常そのものである町や朝が、「別」の一語を得て、魔法のように新しい風景へと切り替わる。
「別の朝」のフレーズはブルースから思い浮かんだという。研究者として何度も訪れたアメリカで作者はブルースの文化と出会う。ブルースとは何か。作者はその心を次のように解き明かす。
「こんなひどい仕打ち、もう耐えられそうもない、・・・いいさ、おれ(あたし)は別の町に行くさ、・・・いつだって、いつだって、真っ新な別の朝が来るんだからな」
生きるとは日々別の朝を迎えること。桜に立つのは作者であり、また私たちでもある。
(丸谷 三砂)花仰ぐまた別の町別の朝
坂本宮尾
社団法人俳人協会 俳句文学館635号より