俳句カレンダー鑑賞 令和6年10月
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華凜は平成28年父の死によって諷詠四代目主宰を継いだ。天命とはいえ年齢も句歴も若い華凜が一結社を継ぐ覚悟はいかばかりであったか。果してどうしようもなく苦しい時は月を見上げ苦しさを昇華した。俳句の道から迷いそうになった時も四季の月を仰ぎ心の癒しとした。月光が進むべき道を照らしてくれた。平成25年、深い悲しみに〈喧嘩して月へ帰ると言つてみる〉と詠んでいる。「月の華凜」なのだ。
第二句集『月華』は令和3年に上梓した。(星野立子賞受賞)。月華は「月の光、月光」と広辞苑にある。四章から成り章名の全て月の句の言葉から付けている。
掲句は平成29年観月能の作。小面の白さは月光に更に増す。月光が差すとも照らすとも言わず、「宿す」という。
能面の白さは月華そのもの。小面の動きに月華は動く。作者自身も心に月華を宿し小面の動きに乗って行くのだ。
(金田志津枝)能面の月華を宿す白さかな
和田華凜
社団法人俳人協会 俳句文学館641号より