俳句カレンダー鑑賞 令和7年1月
- 俳句カレンダー鑑賞 1月
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毎年多くの日々を富士山の麓で過ごす晴子ならではの句である。
正面に見る富士に全身で向き合って初日を受け止めている。「富士の初日を」という中七の結晶を、上五の「満身に」と、下五の「寿げり」という措辞が柔らかくほぐして、一句を昇華させている。
景と心が一体となっており、満身に日を浴びる喜びと生命の輝きを表す。神々しさ、富士に対する畏敬の念も伝わる。読んだ皆に幸を分けてくれるようで、正月に相応しい一句だ。
「寿ぐ」という言葉について、晴子の祖母中村汀女は、「一字で万の想いを表せる深い言葉である」と語っている。汀女には〈初富士にかくすべき身もなかりけり〉の句がある。 晴子の句も、この「風花」、「今日の花」の三代の流れの中にあり、小細工や外連味のない句である。
(松村 直央)満身に富士の初日を寿げり
小川晴子
社団法人俳人協会 俳句文学館644号より