俳句カレンダー鑑賞 令和7年3月
- 俳句カレンダー鑑賞 3月
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平成8年、小原 啄葉の指導する句会に初めて参加したとき、一羊さんは既に岩手俳壇の若きホープであった。『喝采』で俳人協会新人賞を受賞されたとき、本紙「顔」欄にて「永遠のお兄様」と書いたが、驚くことにその風貌は今も変わらない。
掲句はその句集に収められた初期の作品。一羊
さんは当時高等学校の教員。3年間密な時間を共にした生徒たちは、こちらの甘い感傷をよそに、それぞれの道を既に確実に歩き始めている。その背中を頼もしく思うと同時に、とり残されたようにも感じる手離す側の心のうちを、「声の届かぬ遠さ」と言い留めた。
句集には、〈頰白き子よ霙の日退学す〉〈スカートと呼べぬ短さ万愚節〉などがあり、教師白濱一羊の顔も見えて味わい深い。あれから20年、そろそろ第2句集が待たれる。
(三角 尚子)もう声の届かぬ遠さ卒業子
白濱一羊
社団法人俳人協会 俳句文学館646号より