俳句カレンダー鑑賞 令和7年4月
- 俳句カレンダー鑑賞 4月
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主宰誌の「雛」令和2年4月号に掲載された作品。前年、新元号が発表される直前の平成の終りに鎌倉で詠まれた。背景が分かると一気に句に奥行が生まれ、鑑賞が広がる。虚子の句に「鎌倉」と前書を付けた〈秋天の下に浪あり墳墓あり〉があるが、この句にも同じ前書があっていい。
三方が低い山並、一方が海へひらける鎌倉は四季折々の風情を見せる。折から桜の頃は殊に美しく、町を歩くだけで山並の桜まで観賞できる。谷戸には武士を弔う寺社もある。桜隠れの「一宇」をそのような建物の甍と捉えると「しづめ」には鎮魂の意もあろうか。また桜が咲けば虚子忌が近づく。作者は虚子を思っていたのかも知れない。
花の山を眺めていて溢れそうな感情を、作者は「しみじみと」の五文字に抑えた。
(阿部 信)しみじみと一宇をしづめ花の山
福神規子
社団法人俳人協会 俳句文学館647号より