俳句カレンダー鑑賞 平成22年2月
- 俳句カレンダー鑑賞 2月
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第4句集『はんてんぼく』所収。平成9年、「駒草」の主宰を引き継いで3年目の作。
この一集には、主宰としての繁忙の日々の中にあっても、「日常を丹念に拾い上げた句」「自然をまっすぐに見据えた句」という作者の作句上の根本的な考えに添った句が多い。
掲句は旅の途次で詠まれたというが、分かりやすい叙法で親しみがもてる。目的地までの景の中の「梅林」を句に据えたことによって、送ってくれる人へのあたたかい目差しも、作者の大らかな気息も伝わってくる。また少し深読みをすれば、「送られて」の表出にややかげりのある控え目な情感が出ているように思われてくるし、「梅林のそば」の微妙な距離感も、かえってほのぼのとした余韻をひく。
「駒草」の現西山睦主宰は、『はんてんぼく』の読後感に「年齢が満ちてゆくよさをつくづくと味わうことができた。みどり女の<満ちてくる豊かさ>の世界がそこには待っている」と書かれている。(白鳥 耕子)送られて梅林のそば通りけり
蓬田 紀枝子
社団法人俳人協会 俳句文学館466号より