俳句カレンダー鑑賞  平成22年3月

俳句カレンダー鑑賞 3月
あかときの山にまがねの雉の声 中山純子

 「万象」平成16年7月号に発表。「夏きざす」と題する作品のうちの1句。
 中山純子は金沢の人。60年前、金沢で沢木欣一が創刊した「風」に入会。
 〈雉子若し春の彼岸をかきわけて〉でデビューした。掲出句と時を結んで呼応しているようで興味深い。
 城下町金沢には豊かな自然が一杯ある。今も川や森や山が美しい。季節になると雉子が人家近くまで遊びに来ることがあるという。
 目の前には卯辰山、遠くには医王山が見える。この「あかとき」の山は住まい近くの裏山であろう。
 山のシルエットの暗さが微妙な夜明け前、山から一直線に雉子の声。硬質な短い鳴き声を「まがね」と具象化して迫力がある。
 句は剛胆にみえて繊細、句柄の美しさを文字で味わい、耳で古典的な響きを楽しませてくれる。
 中山純子は細見綾子に初学の頃から師事し、師系の直近として繋がる唯一の人である。日本語の美しさを知るのも、師匠ゆずりといってもいい。(内海良太)
あかときの山にまがねの雉の声

中山 純子

 社団法人俳人協会 俳句文学館467号より