俳句カレンダー鑑賞 平成22年6月
- 俳句カレンダー鑑賞 6月
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一読、雀の愛らしい姿が眼前に浮かぶ。雀は大抵仲間と連れ立ち群れて行動しておりその姿で目に止まるが、この雀はその時何らかの事情で一羽で家の陰か物陰から道にひょいと出て来たのだ。私たち人間から見ると「疑う」ことを知らぬその姿、動きが胸を打つ。
その愛らしい姿を「小走りに雀が道に」と十二音で表して、実に的確余す所が無い。折しも季節は夏、青葉をやや強い南風が吹き渡っているのだ。そこに小走りに出て来た一羽の雀は、賜った生命を無心にいきいきと生きているのであり、季語の「青嵐」の持つ美しい情景と共にまことに感動的である。
常々「構えて作ったものは俳句ではない」、「俳句はただの机上の作品であってはならない」、「外に出て、物事に触れる事によって得た感動を自分の言葉で即座に表現する」のが俳句と主張する作者の思い通りの作であろう。
昭和63年作、句集『破魔矢』所載の句である。
(波多野弘凱)小走りの雀が道に青嵐
村田 脩
社団法人俳人協会 俳句文学館470号より