俳句カレンダー鑑賞 平成22年7月
- 俳句カレンダー鑑賞 7月
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第9句集『水戸』所収。水戸近郊に生まれた今瀬剛一は長男として家を継ぎ、ふるさとにとどまり、ふるさとを詠み続けている。剛一にとってふるさとは自分を取り巻く自然であり、風土であり、生きて来た証でもある。
ふるさとの山を川を大地をずぶ濡れにした雨があがり、涼風が立ち、太陽が顔を出した。虹が出るかもしれないと外に出ると、ふるさとを包み込むようにして大きな虹が架かったのである。虹の輝きは、立っている地面にまで影を落とすほどであった。一本の虹が見慣れたふるさとの景を美しいものに変えたのである。ふるさと賛歌の心がひたひたと伝わって来る。
〈まひまひや故郷をめぐり来たる水〉(『対岸』)
〈素足がいい眼つむるがいい故郷は〉(『晴天』)〈ふくら雀とふるさとを同じうす〉(『大祖』)と、ふるさとに向かいあって来た今瀬剛一は、句集名『水戸』のもとになった〈紅梅は水戸の血の色咲きにけり〉で、ふるさとの血に感謝している。(岡崎 桂子)
ふるさとの虹地面にも映りけり
今瀬 剛一
社団法人俳人協会 俳句文学館471号より