俳句カレンダー鑑賞  平成22年9月

俳句カレンダー鑑賞 9月
うつくしき会釈でありぬ草の花 横井 遥
うつくしき会釈でありぬ草の花  横井遥
 氏を語るとき見落としてならないのは、氏を俳句の世界に誘った猪口節子氏の存在だ。平成8年に第11回俳句研究賞を受賞し、その年に亡くなった節子氏は、徹底的に日常に題材をとって作句し続けた。
 たとえば〈飛ぶ風のなく草の実のこぼれけり 節子〉はその好例だ。そしてこの一句は、遥氏の〈うつくしき会釈でありぬ草の花〉とよく響き合う。
 日常からの飛翔ではなく、日常生活にこそ飛翔があるという遥氏の確信は、節子直系の為せる業だろう。
 こうした血縁を超えた縁を生む俳句という文芸に改めて惹かれる。この季節、もう一句挙げるなら〈とんばうの飛ぶと決めたる羽に色 遥〉。(平山雄一)
 社団法人俳人協会 俳句文学館473号より