俳句カレンダー鑑賞 平成23年6月
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こけし屋に頭を揃へたる雛燕
皆川盤水
「こけし」は、円筒状の胴に丸い頭をつけて女児の姿を表現する、東北地方独特の民芸品。その愛好家・蒐集家でもあった作者は、旅の都度小まめに各地のこけし工房に足を運んでいた。書斎には専用の棚があり、びっしりとこけしが飾られていたものだ。
この句は、昭和44年に沢木欣一先生とともに、山形の立石寺へ参詣したときの作品。参道の入口の、食堂を兼ねた土産物屋で昼食をとった。店の土間には燕の巣があり、燕が気儘に出入りしている。親燕が餌を運んでくるたびに、巣から乗り出した雛燕たちは、いっせいに大きな嘴をあける。
店には土産物として多数のこけしも陳列されていたのであろう。巣に頭を揃えた雛燕の愛らしさと、棚に丸い頭を並べたこけしの可愛さが、重なり合って見えてくるようだ。句集『銀山』所収。
(池内けい吾)社団法人俳人協会 俳句文学館482号より