俳句カレンダー鑑賞  平成23年9月

俳句カレンダー鑑賞 9月
肩に触る花芒まだやはらかし 小川濤美子

肩に触る花芒まだやはらかし 小川濤美子
 作者は母上中村汀女とよく山中湖村の山荘で過ごされていた。汀女亡き後、主宰を継承されてからも、東京を離れ山の自然に浸りに行かれる。
 秋の七草の一つである芒は、どこにでも見られる植物だが、富士の裾野の芒原は特に美しい。  ふと肩に触れた芒の穂が、まだやわらかいと感じた作者。花芒の思いがけないしなやかさに、一瞬の驚きを句にまとめられたと察せられる。
 掲出句の他にも〈光り靡く芒野原にただ対す〉〈芒野に心も身をも委ねたし〉の句がある。富士山や、祭りや、村の暮らしも多く詠まれている。
 東京生まれで都会暮らしの長い作者にとって、自然豊かなこの地は、心の古里であり俳句の源泉なのであろう。
 第3句集『来し方』(平成20年刊)所収。(石田 慶子)
 社団法人俳人協会 俳句文学館485号より