俳句カレンダー鑑賞  平成23年10月

俳句カレンダー鑑賞 10月
ゆるむことなき秋晴の一日かな 深見けん二

ゆるむことなき秋晴の一日かな 深見けん二
 限りない秋晴。陰翳のない澄みきった秋の空が目に浮かぶ。「ゆるむことなき」と叙したところに、情景と作者の心持ちが出ていて調べもよい。
 作者はNHKの「五七五紀行」で、虚子が疎開した小諸を訪ねた。自解によると、その時のことを思い出して、「秋晴」の題詠で、〈秋晴の一日なりし浅間山〉〈師の仰ぎ給ひし浅間秋晴るる〉などを作っているうちに固有名詞が一切除かれた掲句が出来たという。
 作者の作句信条は、実際のものを見て、ものにふれての写生。題詠であっても見たものを甦らせて作っているので写生句となんら変わりはない。感動したことに表現をいかに近づけるか、このことの大切さについて考えさせられる一句である。
 平成13年作。第6句集『日月』所収。
(水島 直光)
 社団法人俳人協会 俳句文学館486号より