俳句カレンダー鑑賞  平成23年11月

俳句カレンダー鑑賞 11月
集へるは俳のバッカス神の留守 辻田克巳

集へるは俳のバッカス神の留守 辻田克巳
 バッカスはギリシャ神話のディオニュソスの別名(ローマ神話・英語読み)で、オリンポス十二神に数えられることもある豊穣と酒の神。また人々を狂乱と陶酔に導く秘儀の神でもある。
 ここでは、もちろん比喩。句を論じ、文芸を語り、俳人たちの宴は熱気そのもの。時あたかも陰暦10月、八百万の神々が出雲に参集するという蕭条たる神不在の月。この時とばかり、いや、その神の留守を守るかのように宴は続くのだが、俳人たちにはひょっとして俳の神が宿り始めているのかも知れぬ。
 そういえばギリシャでも冬、アポロン不在の神殿をディオニュソスが守るのだとか。
 この句には、俳への熱い魂が隠れている。
 昭和61年作、句集『幡』(平成2年刊)所収。
(富吉  浩)
 社団法人俳人協会 俳句文学館487号より