俳句カレンダー鑑賞  平成23年12月

俳句カレンダー鑑賞 12月
昔より聖者は痩せて枯芭蕉 鷹羽狩行
昔より聖者は痩せて枯芭蕉 鷹羽狩行
 平成7年12月号の「俳句研究」で「今年の秀句ベスト5」の特集があり私はこの「枯芭蕉」を鑑賞した。出典は「俳壇」1月号だから、平成6年作。この句は狩行氏の句集『十一面』に収録され、帯の自選11句にも抄出されている。
 枯れさらばえた芭蕉が従容と立っている。作者はこの景に聖者の姿を重ねた。『徒然草』第49段に登場の心戒という聖は居住も定めず、風雲に身を任せ、痩せてくろずんでいたという。  生活を極限まで簡素化し、心の中に豊かさを求めた良寛、西行、芭蕉の清貧の系譜を思い、強く共感した。
 平成7年刊の『鷹羽狩行の世界』は534ページ、174名が執筆しているが「枯芭蕉」の句に触れたものはなかった。
 俳人協会創立50周年の掉尾の12月のカレンダーに、鷹羽会長がこの句を揮毫された。
 氏の傘寿記念に出した『山河』は、既刊の句集1万句を333句に絞った超厳選で、「自選こそ創作」と言わしめた中に「枯芭蕉」の句があり、感銘を深くした。
(仁尾 正文)
 社団法人俳人協会 俳句文学館488号より