俳句カレンダー鑑賞 平成24年5月
- 俳句カレンダー鑑賞 5月
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牡丹は変幻自在な咲きぶりの中に、あらゆる花の総和が見られることから「花中の王」と称されている。また、牡丹の異称である「国色」は、一国中の絶世の美女を表す言葉であり、牡丹の精というと嫋やかで妖艶な女性が描かれる。
だが、白牡丹となるといささかその趣は異なり花の気高い美しさが際立つ。雪の白さにもなぞらえられる白牡丹は、雨後の雫を浮かべたものも陽光のもとにさざめくものも美しいだろうが、敢えて月下に置いてみることにする。
するとその白色はいっそう透明なものとなり、黄金の花蕊は得もいわれぬ音を奏で始める。
蕊を包む花弁は、漣の立つごとく四方へ音を伝えていく。
その音色には、牡丹の故郷を通って流れ下ってくる黄河の、滔々とした響きが思われるのである。(原 朝子)
その蕊に黄河のひびき白牡丹
加藤 耕子
公益社団法人俳人協会 俳句文学館493号より