俳句カレンダー鑑賞 平成24年7月
- 俳句カレンダー鑑賞 7月
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仙台市郊外に臨済宗の名刹大梅寺がある。漱石の『草枕』に描かれている寺で、修業寺として続いてきた。掲句は、ここでの嘱目である。
蕃山という里山の中腹にあるこの寺には、豊かな地下水が絶え間なく湧き出している。蕃山の木や草に磨かれた水が、苔むした石鉢に流れ込み、溢れ出す。
尽きることなく清冽な水を生み出す自然の恵みへの感謝が、「受けてあふるる」という表現に寵められている。
また草清水の清らかさと冷たさは、修行第一の禅寺のイメージと響き合い、溢れる水は仏教の慈悲の心にも通底する。
モノに対する謙虚な目が、自然の恩沢を掬い取り、開山以来脈々と受け継がれてきた精神への共感と敬意を引き出した。
地霊へ向け、滋味に富む挨拶となったと思う。
現在、石鉢の側にこの句を彫った句碑が建つ。(篠沢 亜月)石鉢に受けてあふるる草清水
柏原 眠雨
公益社団法人俳人協会 俳句文学館495号より