俳句カレンダー鑑賞 平成24年7月
- 俳句カレンダー鑑賞 7月
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第31回角川俳句賞受賞作品「海女の島」50句の冒頭句である。
能登沖の舳倉島に渡るには、輪島から1日1往復のフェリーに乗らなければならない。約1時間半の航路となる。
作者が渡航の海はあいにくの荒れ模様。波が高く船は大揺れ、やがて雷雨にまで襲われる始末。しかし、その雨も晴れ上がり、漸く船上から洋上の島影を見ることができた。その瞬間の昂りが、助詞を挟んでリズミカルに表現されている。
「雷雨」は厳しい自然の象徴。絶海の孤島での暮らしは決して容易ではない。だが、そういう島にも人々の生き生きとした営みがあり、艶めく息遣いがあるのではないだろうか。「陽の艶に」には島へのそんな思いが込められていて、このあとの数々の感動的な出会いまでも予感させる。 (中川 雅雪)海女の島一雷雨後の陽の艶に
千田 一路
公益社団法人俳人協会 俳句文学館495号より