俳句カレンダー鑑賞 平成24年11月
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毎年須賀川の牡丹園で行われる牡丹焚火は、その年に枯れた牡丹の木を焚く行事である。言葉のイメージははかなげだが、大きな火吹竹を吹いて熾す焔はかなり盛大なものだ。仄かな芳香をたてて昇る煙は、まことに牡丹の木の精が昇天していくさまを思わせる。
この句は句集『舊雨今雨』所収。牡丹の木がその命を全うするとき、人の世にあかあかと火を点した。
火はやがて消えてしまうが、作者の胸中に温かさと明るさを失わず、いつまでも点り続ける。 火のはかなさ、人の世のはかなさ、さらには心に点る希望や生命の循環...そんなことまで感じさせてくれる句である。
昨年の震災では須賀川も大きな被害を受けた。牡丹園は一時瓦礫などの置き場となっていたが、すでに復旧し、賑わいを取り戻したと聞く。
今年の牡丹焚火も、人々の心に温かく明るくあれと祈ってやまない。
(中根美保)人の世にあかあか牡丹焚火かな
島谷 征良
社団法人俳人協会 俳句文学館499号より