俳句カレンダー鑑賞 平成26年2月
- 俳句カレンダー鑑賞 2月
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春の海を賑わしく鴎たちが飛び交っている。麗かな気分に浸っているうち、ふとその数が知りたくなる。正確に数えたわけではないが、その数は「偶数」に違いないと作者は直感する。奇数であれば必ず仲間外れが出来る。平和な海にそんな存在はあって欲しくない。
「偶数は割れて」は単なる数学的真理だが「必ず」が入ることで、そんな祈りの思いがこもる。
春は鳥や獣にとって交配の季節である。「偶数」であればよいと思った心の底には、かもめのツガイのことがあったに違いない。一羽も漏れることなく、みな見事に伴侶を得て、命を次代に繋げて欲しい。その思いは、かもめにとどまらないで、世の年頃の若者たちにも向けられている。「偶数」は幸福の数である。
調和と平穏を愛する作者らしい見方だ。(高柳 克弘)偶数は必ず割れて春かもめ
小川軽舟
公益社団法人俳人協会 俳句文学館514号より