俳句カレンダー鑑賞 平成26年3月
- 俳句カレンダー鑑賞 3月
-
掲句には次の自註がある。「春田といってもまだほんの荒鋤田の段階でそこにこれもまだ冬の傷みのままの畦が心もとなく通っている」。そして作者は、「よろ/\と」を俗語風で素直さが際立つ語として諾っている。
掲句はまさにこの「よろ/\」で、一読忘れ得ぬ句となっている。この言葉は「足どりが確かでなく、よろめくさま」と辞書にあり、人を形容する語である。あまり壮健ではない作者が、まだ頼りない春田に親しみを感じ、春田と一つになって初めてこの一語が得られたのではないだろうか。
一句にそこはかとない慈しみと懐かしさが感じられるのは、そのためであろう。「かよへる」の平仮名表記も周到で「よろ/\」を助長しているかのようだ。
平成14年刊、第3句集『寒木』所収。(陽 美保子)よろ/\と畦のかよへる春田かな
綾部仁喜
公益社団法人俳人協会 俳句文学館515号より