俳句カレンダー鑑賞 平成26年3月
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もう10年以上前の話になるが、馬籠から妻籠へと中山道を歩いた。馬籠宿の高札場で缶ビールを1本空けた記憶が残るから、夏の盛りの頃だったと思う。高札を過ぎると観光客も減り、峠越えの山道へと変わる。所々車道と交わるのは今や仕方ない話として、それでも馬籠峠には今も集落が残り、人々の暮らしがあることには少なからず感激したことを覚えている。
掲句における「木曾」とは、御嶽山や駒ヶ岳に代表されるアルプスの山々。そして、その山々に見守られた人々の暮らしぶりを含めてのことである。だから「水迅き」とは、何も川に限らず、雪解け水の側溝や、水舟を溢れる未だ冷たい山水のことだとしてもよい。そしてそう思えば、ぬかるみに咲くまんさくの花にも、あの峠の集落を見る思いがするのである。(堀木 基之)水迅き木曾のまんさく咲きにけり
中村雅樹
公益社団法人俳人協会 俳句文学館515号より