俳句カレンダー鑑賞 平成26年4月
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しばらくは青空のもの花吹雪
鷹羽狩行空へ吹き上がる花吹雪は向こうの丘からだろうか、公園が放ったものだろうか。「青空のもの」と詠まれた「花吹雪」は、その量感・質とともに「しばらくは」と滞空時間の恍惚を伝えてくる。それは「花吹雪」と一体化した作者の恍惚にほかならない。絶妙で、なんとも楽しいかぎりである。
句を読むとは句に浸ること。だが、そのとき読み手は半ば無意識に、例えば〈青空にしばらく花の吹雪かな〉などの句と並べ読みしている。と、〈しばらくは青空のもの〉に重なって、遊び歌「花いちもんめ」の世界が彷彿してこよう。「勝ってうれしい花いちもんめ/負けてくやしい花いちもんめ/あの子が欲しい/あの子じゃ分からん/この子が欲しい...」。手をつないだ二組が掛け合ってジャンケンし、好きな子を取り合う遊びは、まさに「しばらくは青空のもの」の世界である。どちらが勝っても(空のものでも地上のものでも)「花吹雪」に楽しくないわけがない。(仲村青彦)公益社団法人俳人協会 俳句文学館516号より