俳句カレンダー鑑賞 平成26年5月
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罌粟に二種類ある。栽培が禁じられているものと、そうでないもの。戦前は国策により阿片罌粟が大規模栽培されていたが、戦後は栽培が禁止になった。現在は目にする機会が殆どない。罌粟と詠まれるのは、園芸種の雛罌粟のことが多い。
多佳子は作者の母、俳人橋本多佳子。〈罌粟ひらく髪の先まで寂しきとき 多佳子〉。着物姿のすらりとした美人と聞く。風の中、しなやかに揺れる罌粟畑。一色も美しいが、多色もモネの絵のようで美しい。多佳子の如何にも好みそうなかかる罌粟畑に佇つ。母への思慕、俳人多佳子への懐古が心に溢れ出て得た即興的創作かと思う。「来さう」は願望。
作者は「感動した詩因を大切に、自分を潜らせて言葉を選ぶ」と。
平成10年刊、第3句集『七星』所収。(桐生 紫)風の中多佳子来さうな罌粟畑
橋本美代子
公益社団法人俳人協会 俳句文学館517号より