俳句カレンダー鑑賞 平成26年5月
- 俳句カレンダー鑑賞 5月
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吉岡翠生氏は5月生まれと聞いている。毎年、祖父母から貰った武者人形を飾ってきたので、端午の節句には一入の想いがあるようだ。
古来、我が国でも数々の戦が繰り返され、緋縅・綾縅などの華やかな鎧をつけた武士たちが、様々の物語を生んできた。
掲句も美々しく飾られた武具に対する作者の想いが込められているが、「いくさ美しかりし頃」の修辞に、作者独特の感性と表現が感じられて興味深い。
私はよく須磨・明石あたりを散歩するが、この句から源平合戦、特に熊谷直実、平清盛の物語が脳裏を掠める。
数々の歴史や逸話を遺してきた武士たちの姿が蘇り、当時の殺伐とした戦闘の中にも、折に触れて見せてきた武士道の床しさまで、この句は思い出させてくれるのである。(木村淳一郎)武具飾りいくさ美しかりし頃
吉岡翠生
公益社団法人俳人協会 俳句文学館517号より