俳句カレンダー鑑賞  平成26年6月

俳句カレンダー鑑賞 6月
よく眠りよく食ふ毛虫よく太り 筑紫磐井

 成人における「よく眠りよく食う」行為は、健康を害する生活習慣であり、結果として「よく太り」という成人病のリスクが高くなる。
 それが毛虫ならどうなるか。毛虫は葉だけを食べ続け、中には体重の2倍もの青葉を1日に食する太った毛虫も実在する(結構キモカワイイ)。
 さらに食欲旺盛な毛虫が生命力を増し、大集団となると、草木に被害を及ぼす。
 掲句は「よく」を上中下と配することで、相反する悪い予兆にニンマリとほくそ笑む作者が想像できる。しかしその先には、作者が太った毛虫の大群に逆襲されることも考えられ、その想像に読者は喜ぶ。
 諧謔の被虐的連鎖に危険を察知しつつ、読者はその呪文から逃れられなくなるのだ。これを俳句における《毛虫の法則》と名付けようと思う。
(北川 美美)
よく眠りよく食ふ毛虫よく太り

筑紫磐井

 公益社団法人俳人協会 俳句文学館518号より