俳句カレンダー鑑賞 平成26年7月
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『源氏物語』の浮舟は悲劇の女性である。薫大将に愛されたが、亡き姉大君の代わりとしての存在だった。
匂宮にしても、決して彼女を心から大切に守るわけではなく、鄙で育った生い立ちも合わせて、彼女は常に不安定で孤独な女性だったのだ。
国文学者でもある松本旭氏は、この浮舟に強く心惹かれている。彼女が抱く悲しみ・寂しさに思いを馳せ、こころを痛めているのだ。
ある夏の午後、旭氏は浮舟の巻を読み返していた。やはり彼女の孤独を思わずにはいられない。読み終えて本を閉じる。少し疲れたか。白玉でも食べて一休みしよう。
氏はよく冷えた白玉をスプーンで掬う。その白さ・柔らかさ・頼りなさは、どこか浮舟と似通っている。餡の甘さとともに、白玉は儚く口の中で溶けて消えていってしまうのだ。(荒井 良子)白玉や浮舟の巻読み終へて
松本 旭
公益社団法人俳人協会 俳句文学館519号より