俳句カレンダー鑑賞  平成26年7月

俳句カレンダー鑑賞 7月
一面に咲き向日葵は個々の花 片山由美子

 一面の向日葵といえばイタリア映画の名作『ひまわり』のラストシーンに映された向日葵畑を思い出す。
 戦争によって引き裂かれた夫婦の姿を、名優マルチェロ・マストロヤンニとソフィア・ローレンが名演した。
 地平線まで広がるその向日葵畑は、失われたものを象徴するように、鮮烈にそして静かに風に吹かれている。
 掲句の向日葵はどこを想像してもいいのだが、やはり映画のように広大な大地に広がる向日葵畑を思い描きたい。湿度のある日本ではなく、乾いた風が土の匂いを乗せて吹いてくるような異国の空気とともに...。
 花の咲きざまを「一面の」と詠む花は他にもあるだろうが、「個々の花」という言葉が活きるのは向日葵の花に尽きるだろう。それぞれに首を傾げて立っているその咲きざまは、人間の姿にも見えてくる。(日下野由季)
一面に咲き向日葵は個々の花

片山由美子

 公益社団法人俳人協会 俳句文学館519号より